アールヌーボーの時代にパリで活躍した画家1860724 – 1939714。祖国チェコではムハと発音されます。

画家と書くと、ミシャの事を「高い芸術性を備えた大画家」という人は少ないかもしれません。

しかしWikipediaに書かれているとおりミュシャが「グラフィックス・デザイナー、イラストレーター、画家」だとすると、パリ時代のミッシャの活躍はまさに天才的なグラフィックス・デザイナーで時代の寵児だったと言えるでしょう。

 

「大女優サラ・ベルナールの舞台のポスターを切っ掛けに、アールヌーボー風の装飾を施した女性像を数多く描いて好評博した」というのが一般的な記述ですが、これではミュシャの業績のごく表面的な説明をしたにすぎません。

ミュシャは“アールヌーボー風の装飾”を平面的に描き、リアルな陰影のある女性と、意図的に違和感を際立たせた表現をしています。装飾の部分は、例えばギリシア神話等のモチーフを使い、現在に生きる女性がギリシア神話の世界を”演じている”ように描いています。「モデルの女性を使って、ギリシア神話の世界を描いた」のではなく、あくまでも「ギリシア神話の世界をコスプレする今の女性を描いている」という点がミシャのポスターです。この構図を成り立たせるするため、ミシャは二つの工夫をしています。一つは先に述べたとおり、装飾部分を平面的に、または人物とは異なる遠近法と陰影で描いているという点。もう一つは平面的にもかかわらず、細部のリアリティーには非常にこだわっているという事です。人物の描写も、極めてリアルで柔らな輪郭線、なだらかな陰影を追求しています。このリアリティーの追求が、装飾部分と女性像の違和感を際立たせ、絵を「ギリシア神話の世界をコスプレする現代の女性」に見せるのです。このコスプレ感覚は当時のパリでウケまくりました。モデルになった女性も、完成した絵を見て気持ち良かったのではないでしょうか。

さらにミシャは様々な対象を女性で表現するシリーズを展開していきます。

四季、四つの芸術、花、宝石、星、時の流れ(朝・昼・夕・夜)までも擬人化して描きます。

「日本人に萌化できないものは無い」などと聞いた事がありますが、時の流れの萌え化なんてすごいと思いませんか?

ちなみに日本人のミシャ好きは有名で、世界の中でも最も有力なミシャのコレクションが日本にあります。(堺市)

 

 

シャは50歳になるとチェコに帰国し、それまでとは全く異なる画風(油彩)で20枚の壁画サイズの連作『スラヴ叙事詩』を製作します。それは素晴らしい大作なのですが、私としては、市民会館の市長の間の内装や、聖ヴィート大聖堂のステンドグラスのような工芸品の方が好きです。

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